記号、現実、理想主義

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輪るピングドラムと地下鉄サリン事件

 7年前の7月7日、輪るピングドラムというTVアニメの放送が開始した。

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 このアニメは、非常に挑戦的な問題作だ。親の愛に恵まれなかった子供たちはどう生き残っていくべきかを、地下鉄サリン事件をモチーフに描いた作品だからだ。

 私はこの作品が大好きだ。恋愛的な愛ではない愛を克明に描いた作品であるからだ。だが同時に、なぜ地下鉄サリン事件がモチーフなのかあまり理解できていないし、この事件と絡めてこの作品を読み解くことに抵抗感を感じる。

 なぜなら、事件の加害者の子供達と事件の被害者関係者が和解するストーリーラインがあるからだ。その上それが主題ではない。

 この作品の主題はあくまでも愛だ。愛されることの意味、そして愛されないこととはどのような結末をもたらすのか、愛されなかった子供に救いはあるのか、そうしたことを描いている。

 また、この作品に関する重大な事件として、酒鬼薔薇聖斗事件も挙げられるだろう。彼の手紙に記された「透明な存在」というキーワードもこの作品に登場し、愛されなかった子供は透明になってしまうと繰り返し述べられる。

 そして、作中で起きたテロ事件の首謀者は、透明な存在である自分は世界を呪い復讐するという動機で地下鉄テロを起こす。

 この作品は斯様に平成前半の大きな事件を包括した作品である。そしてこれは単なる偶然ではあるのだが、東日本大震災が起きた平成23年に放送された。この東日本大震災も作品に影響を与えており、赤べこなど東北モチーフの小物がところどころ登場する。

 つまり輪るピングドラムというアニメ作品は、大げさに言うのならば平成を象徴する作品と言えるのだ。